先日、九月大歌舞伎の二部を観劇して参りました。
アタシが歌舞伎を見始めたのは20年前。
当時、若手の花形と言われていたのが、今の幸四郎さん、松緑さん、海老蔵さん、菊之助さん、猿之助さん、勘九郎さん、七之助さん達でした。
その面々が、今では中堅世代として座頭を勤めることが多くなりました。
が、しかし…。
同世代のお客様を掴もう。その為にはウケの良い新作や、分かりやすい、もしくは派手な演目を!という流れのためか、義太夫狂言が取り上げられることが余りに少なかった様に思います。
ファンとしては、コロナ以前からそれが気掛かりでした。
というのも、団十郎さん、勘三郎さん、三津五郎さんが亡くなり、菊五郎さん、吉右衛門さん、仁左衛門さんもご高齢。玉三郎さんもお歳70を超えていらっしゃいます。
若い世代が「今」受け継がなくては、芸の伝承が実質途絶えてしまうのでは…。
と自分の食い扶持の心配をよそに、気に掛けておりました。
そんな最中、幸四郎さんが時代物の大曲『盛綱陣屋』の盛綱に挑戦するという知らせが!
何でも幸四郎さんは、以前、勉強会で盛綱を出された事があったそうで。
歌舞伎は通常1ヶ月の興行をして儲けを出しますが、役者さんの勉強会というのは、たった数日間。
そのため、我々噺家の勉強会と違って、大変な出費なのだと聞いたことがあります。
ですから、これはもう若い頃から演じたかったお役だったのでしょう。
当初はこの芝居は、吉右衛門さんが演じられる予定だったそうです。それが今回、吉右衛門さんがご病気ということもあり、幸四郎さんが挑戦されることになった、と何かで読みました。
そんな待ちに待った『盛綱陣屋』の座組は意外なものでした。
ベテラン歌六さんが微妙を。これは女形の大役で三婆の一つ。本来ならその歌六さんが演じると思われた北条時政を、又五郎さんが。その又五郎さんの役どころの和田兵衛を、錦之助さん。
そして、若手の米吉さんが早瀬を。これは中堅からベテランの女形が演じてきた役どころ。…等々。
幸四郎さん以外にも、皆さんが挑戦の役どころ。それぞれが、かなりのご負担があるのではと、何となくですが感じました。
この一座がこれから5年10年の義太夫狂言を担っていくことになるはず。
そう思うとアタシも胸が熱くなります。
このように、幸四郎さんが様々な義太夫狂言に挑戦されることで、他の役者さんも刺激を受け、歌舞伎が活性化していけば。
と、ファンの端くれとして心から願うのでした。
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