[噺のネタ]7『大工調べ』(師匠・市馬からでなく…)

 

さてさて、『大工調べ』については「啖呵」「下げ」についてを。

 

このネタの一番の見せ場は棟梁の啖呵(たんか)。
ただ啖呵といっても早く喋るのはNG。

というのは、ここの啖呵は、この後で与太郎が棟梁の真似をして啖呵を切ろうとして上手くできなくて笑いをとる、その仕込みでもあるからです。

『子ほめ』『牛ほめ』でお馴染みのオウム返しの手法です。

このオウム返しの仕込みは、お客様の頭に残るようゆっくり強調して喋るのが基本テクニック。

でも啖呵がゆっくりでは締まりませんし、見せ場にはなりません。かといって早過ぎてはオウム返しで笑いが取れません。

難しいですね。

講談の宝井琴柳先生から「いいかい、早く喋るのは芸じゃあないよ。でもゆっくり喋っているのに早いと感じさせられたら芸だよね」と、修羅場のお稽古で教わりました。

そのテクニックを駆使して、なんとかしたい所ですが・・・

 

下げの難題を何とかクリア!?

 

この『大工調べ』は、棟梁が啖呵を切って、与太郎が真似して失敗し、「これからお恐れながらとお奉行所へ訴えて出ます大調べの序でございます」と、途中で終わることが多いんです。

ここまでで25分掛かるので、寄席のトリではここで切るのが丁度良いというのもありますが、「下げ」の意味が分からないというのが大きな理由です。

アタシも何とか「下げ」までと思ってはいますが、苦労に苦労を重ねて、緊張感のあるお奉行所の場面を乗り越えたのに、「下げ」の意味がわからない・・・こんな辛いことはありません。

幾度挑戦しても、「下げ」のあとのお客様の頭に浮かぶ「???」マークと拍手までの微妙な間が・・・

 

しかし2年程前に、新しい「下げ」を作らずにこの難題をクリアする方法を開発したのです!

考えついてみると、何故今まで誰も思いつかなかったのかという手法なのですが。

少なくともアタシは見たことも聞いたこともなかったです。

 

どんな手法かですって?

それはアタシの高座を聞いてくださいまし(笑)

 

アタシは柳家の型。

当然うちの師匠から・・でなくて三三兄さんから教えて頂きました。師匠・市馬からは二つ目になってからほとんど習ってません。

でも三三兄さんはうちの師匠から。

回りくどい師弟です(笑)

 


<2021.3.1追記>

後輩から稽古を頼まれました。自分の工夫がこれからスタンダードになっていくかもしれないと思うと、わくわくします!

ほんのほんの少しでも、落語にご恩返しができたらいいな。

 

<過去ブログ>
真打昇進披露興行・千秋楽は『大工調べ』。

 

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