第二回は『野ざらし』のことを。
というのも談志師匠が前座さんにお稽古を付けている音源を聞いたもので…。
談志師のお稽古は「俺はこう喋ったが、それは俺の個性であって、最大公約数の喋り方ならこうなる」「仕方噺は体と言葉が連動するよう、きちんとおぼえるように」とすこぶる丁寧です。
そのお稽古の中で「ここは柳枝の調子な、でここは柳好♪」と、嬉しそうに仰ってます。
聞いていると、何だかこちらまで嬉しくなりますな。
「あらゆる落語の中から一席選ぶなら、柳好の『野ざらし』」と、その談志師匠が仰るくらい、三代目柳好師匠の十八番ネタでした。
柳好師が高座に上がると、客席から『野ざらし!』と注文されたそう。
当時若手だった先代の桂文治師匠が『野ざらし』を掛けたら「柳好の噺なんだからお前がやるな!」と怒られたという…自他共に認める正真正銘の得意噺です。
今の寄席では「そのネタはこの師匠の得意ネタだから掛けるのはやめよう」という噺家はだいぶ少なくなったようです。
小三治師匠の『小言念仏』や権太楼師匠の『代書屋』を、前の出番で掛ける噺家もたまにいたりして、その時はおお!チャレンジャーだなぁ!とけっこう驚かされます。
以前にも一朝師匠の出番の前で歌舞伎ネタの『七段目』を掛けた噺家がいたんですが、流石にうちの師匠が呆れていたことがありました。ハラハラしたなぁ。。。
うちの師匠も『七段目』は得意にしていますが、一朝師匠と正雀師匠の出番の前では掛けないもので…。(そんなうちの師匠の『七段目』を聞いて、某師匠は『七段目』を封印されたそうですが、それがどなたかは内緒の話)
また、暮れになると、一朝師匠もうちの師匠の前では『掛け取り』につかない様、『尻餅』はお掛けにならないそうです。
『尻餅』は一朝師の十八番なのに…。
演者同士のさりげない気遣い。
芸の上での行儀、という事を考えさせられます。
でもネタ数がないと遠慮も気遣いも出来ませんからね。
まずは実戦で使えるネタを増やさなくては!
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