「これは文七や芝浜をやりこなした達人が初めて手を出して良い、最終奥義のようなネタに違いない。噺家になったら、いつかやってみたい。」
入門前にそんな憧れを抱いていた『つる』。
ですが…
……前座噺だった(汗)
この噺を初めて聞いたのは、まだ私が学生だった頃、場所は末広亭。入船亭扇橋師匠でした。とにかく初めて聞いたこの噺のオモシロイのなんの。
-なぜ首長鳥が鶴になったか、それは雄の首長鳥がツーと飛んで来て、そのあと雌の首長鳥がルーと飛んで来たから-
先生のしょうもない説明を真に受けて感心(感動?)した八五郎が、それを友達に披露するけど失敗する、という話。
自分で書いてみてもしょーもないなぁ、と思うのですが…
衝撃でした。
次に聞いたのが、やはり入門前の末広亭。桂文朝師匠(注1)。こちらもオモシロイのなんの。最初に聴いたお二人が大ベテランだったおかげで、ますます憧れが募りました。
米朝師匠は「つるには大事な話芸の要素が全て詰まっている。つるを笑うものはつるに泣く」とまで仰っていたそうです。
私は真打昇進の半年前くらいに、基本を総点検せねば、と初演した所、自分の芸が変わってきた感触があります。
これからも色々教わっていくことになりそうなネタです。
<注1>途中まで『やかん』かな?と思いながら聞いてました。というのも、通常は八つぁんが隠居さんの所に行くのですが、文朝師は先生が八つぁん?を愚者愚者言うちょっと変わった型だったので。
<補足>元々は上方のネタだったのを先代桂小南師匠がこちらに持ってきて、落語協会では扇橋師匠から広まった噺です。
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