[噺のネタ]26『五目講釈』(古今亭菊志ん兄さんから)

めっきり秋めいて参りました。
皆様、今年の夏はいかがお過ごしでしたか?こちらは快適でした。

桃は美味しいですし、9月に入ってからは朝晩涼しく、最高です!

東京の夏が苦手で移住しましたので、7月から今月いっぱいまで寄席を休席しています。
東京のお客様にはなかなかお目見え出来ておりませんで、あいすいません。
ただ来月以降も顔付けがないのは…あいすいません(泣)

その代わり?色々なネタを引っ張り出しています。

先日は『五目講釈』を久しぶりに掛けました。

お馴染みの若旦那がデタラメな講釈をやるという、ただそれだけ、と言えばそれだけの噺です。
がしかし、そういうシンプルな物ほど難しかったりします。

三三兄の得意ネタですね。
アタシが見習いの頃、うちの師匠・市馬も三三兄さんに『五目講釈』を習って、自分の会で掛けていました。
それ以降どこかで掛けていた形跡はありませんが…。

アタシは『五目講釈』には三三兄さんのイメージがあまりに強かったので、類似の『兵庫船』を二つ目初期によく掛けていました。(注)

『五目講釈』を演るつもりは、まっっったくありませんでした。

それでも二つ目になって最低毎月1ネタ、なんだかんだ年間15本くらいずつ増やしていくと、二つ目の終わり頃には覚えるネタが段々少なくなってきました。

残ったのは、演りたいけど力不足でまだまだとても人前で出来ません、という噺ばかり。
真打ちが近づけば近づく程、演りにくくなるのです…。

そんな中、来月覚えるネタがなくなり、それで『五目講釈』の稽古をお願いすることにしました。
もう自分の設定したノルマをこなすことで頭がいっぱいになっていたのですね。本末転倒です(笑)

それでも覚えるからには、三三兄さんと少しでも違う形で、と思い古今亭菊志ん兄さんにお願いしました。

菊志ん兄さんの『五目講釈』も面白くて好きなんです。

『五目講釈』に限りませんが、兄さんがブワァーっと喋りながら加速していって、いきなりピタッ!と止まる時の気持ち良いこと。
アタシの耳には大変なご馳走です。

その技術を少しでも自分に取り込めないかしら、といくつかお稽古を付けて頂いたのですが、技術も取り込めず、かつ今日まで1つもモノになっていません(泣)

兄さんの元々が面白いので、ある程度はウケるんですが…自分の力でウケてはいないと言いましょうか。

この『五目講釈』をどうにかしたい所であります。

(注)類似のネタとして『兵庫船』『桑名船』があります。
どちらも旅の途中で船に乗り、その船が鮫に囲まれてしまい、犠牲になることになった講釈師が今際の際にデタラメな講釈を読んだら…。という噺。

この2つは別名『鮫講釈』とも言います。

兵庫から船に乗れば『兵庫船』で、桑名からなら『桑名船』です。

また『兵庫船』は5代目圓楽師匠が持ちネタにされたので圓楽党の方が、『桑名船』は談志師匠の得意ネタだとた為、立川流の方が掛けることが多いようです。

ただややこしいのは、上方落語では『兵庫船』には講釈が出てきませんし、『桑名船』はこちらの『巌流島』です。

も一つややこしいのは5代目圓楽師匠の発売されている音源では『兵庫船』ですが『五目講釈』と表記されています。(CDブックレットに理由は書いてはあります)

とにかく『鮫講釈』界隈はややこしいのでお気をつけください。

 

(2025.9.21 20:02 HPに投稿)

 

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