十月大歌舞伎初日の第一部を観劇。
後半の『荒川十太夫』のことを。
結論から申し上げます。
すっごく良かった!
胸にグッときちゃいました。
これは講談を原作とした新作です。
それも神田松鯉先生が掘り起こされた作品だそうで、
アタシはお弟子さんの伯山さんのCDで聴いたことがあるだけ。
講談としても珍しい部類の作品なのではないでしょうか。
(御一門ではそうでもないのかしら)
今回主演の松緑さんが大の伯山贔屓。
よく芸術協会の寄席にもいらしているそうで、
今回の企画が実現したそうです。
他に講談を元にした歌舞伎で思い浮かぶのは、『天保六花撰』を元にした、明治時代に初演の『河内山』、『直侍』あたりでしょうか。
今回の『荒川十太夫』は赤穂浪士切腹の7年後のお話。
珍しい話でもあり、本日初日という事で詳しくは記しませんが、ざっとこんな感じです。
荒川十太夫という下級武士が、泉岳寺に墓参していたことが露見。
なぜ十太夫は身分を偽っていたのか?という物語。
侍の誠の心を描いたいい話です。
クライマックスは、講談では荒川十太夫の一人語りなので、歌舞伎でこの場面をどう表現するのか、と思っていたら・・・
さすがの演出でした。
物語の良さがシンプルに伝わってきました。
役者さんでは、坂東亀蔵さんの、鋭く良く響く声の力と中盤と最後をグッと締める泉岳寺和尚の猿弥さんに感動。
始まりからラストまで見入ってしまいました。
前半は猿之助さんの舞踊『鬼揃紅葉狩』。
『鬼揃』というのは能の小書き(特殊演出)で、鬼女が沢山出てくる型なので、より華やかで楽しい♪ 猿之助さんの舞踊は格別です。
余談ですが、落語の方でも歌舞伎化された作品は沢山あります。
『芝浜』『文七元結』『らくだ』『牡丹灯籠』『豊志賀』『乳房榎』など。
最近では『星野屋』、新作では鶴瓶師匠の『山名屋浦里』。
また、今月第二部の『祇園恋づくし』にて、落語でお馴染みの場面があります。
中村座でも『唐茄子屋政談』が上演されます。
今後も楽しみです。
(2022.10.04 19:40HPへ投稿)