真打ちになって2年半。
寄席では、主に前座さんと二つ目さんの次の出番、真打ちの最初の出番を頂いております。
俗に『浅い出番』と言われますが、これで中々大事な出番なのです。
寄席は毎日様々なお客様がいらっしゃいます。
ご常連の方、初めてのお客様、観光やバスツアーでいらした方・・・などなど。
トリが変わればお客様の層が変わるのは当然ですが、同じトリでも10日間毎日違います。
陽気な日、重たい日、新作がよくウケる日、まくらはよく笑って頂けても落語本編ではウケない日。
同じことをしてもバカウケにもなれば、トラウマになるくらいウケないことも…。
三三兄さんがよく「寄席はホームだけどアワェー」と仰っていました。
寄席で育った我々にとって寄席はホームグランドですが、客席は常にアワェーなのです。
寄席に出ていることで大変に鍛えられますし、寄席に出ていることがアタシ達の誉れでもあるのです。
ですから『浅い出番』でも決して手を抜きません。いや、『浅い出番』だからこそ手を抜けないのです。
何故なら『浅い出番』の芸人によって、その日の客席の空気が決まってしまうことも十分あるからです。
前座さんと二つ目さんで笑いがない、ということは開演して30分笑いがない、ということ。
それ以上その時間が続くと…。
取り返しがつかなくなってしまいます。
ですから『浅い出番』の芸人が、客席を良い按配にすること。
これが大事。
客席があたたまっていない時はあたためて、二つ目さんが新作派であれば、古典落語を受け入れやすい空気にして…。
することは多いのです。
また、「浅草の浅い出番でウケるネタは日本全国どこへ行ってもウケるからね」と言われます。
今年は浅草の浅い出番に入れて頂くことが多かったので、その訓練を随分させて頂きました。
ありがたいことです。
アタシは真打ちになった時から、5年後には寄席の戦力となること、を目標にコツコツ精進して参りました。
最初に申し上げた通り、今は真打に昇進して2年半。
今回の『玉屋噺の会』は中間報告のつもりで開催し、文化庁芸術祭に参加しました。
ネタ出しの『お血脈』『風呂敷』『甲府ぃ』は、どれもよく高座に掛けている噺です。
それでもこの会に向け、それぞれに工夫を重ねました。
『お血脈』にはギャグを足し、『風呂敷』は後半の運びをスムーズにしようと当日まで試行錯誤。『甲府ぃ』は演じ方や喋りのトーンに気を配り、それぞれに変化した所をご覧頂けたのではないか、と思います。
ただ課題も見えてきました。
・・・見えてきた、というか我が家の鬼コーチから指摘されました。
・まくらの話題、言葉の選択
・声の大小、緩急のコントロール、表現方法
・弱点(客席でメモする音など)
皆さまにご記入いただいたアンケートを参考に、今後も稽古の方法を工夫し、よりお楽しみ頂けます様、精進して参ります。
寄席の戦力をめざして。
2022.10.29up
<関連ブログ>
[噺のネタ]11『源平盛衰記』(「地噺はいくらウケても評価されないよ」)