九月大歌舞伎『東海道四谷怪談』を観劇。心に誓った…。

 

幕が開くと、第二幕・伊右衛門の浪宅の場面。

 

仁左衛門さんの民谷伊右衛門は38年ぶりとのことで、当然アタシは初めて。

『桜姫東文章』に続いて仁左・玉コンビで『東海道四谷怪談』ということで、頑張ってチケットを取って歌舞伎座へ行って参りました。

伊右衛門役の仁左衛門さんが、傘張りをしているにも関わらずカッコいい。(傘張りは浪人でお馴染み)

アタシも家に帰ったら傘張り始めようかと思ったほど。(注)

お梅が惚れてしまい「召使いでもかまいませんから、どうぞお側においてくださいまし(大意)」というのも納得です。

 

そして休憩後の隠亡堀の場での名セリフ

 

「首が飛んでも動いてみせらぁ!」

 

ここがきちんと決まって気持ちが良い!

実はこれまで見た伊右衛門は、ここがなかなか決まらずちょっぴり消化不良の事が多かったもので。

アタシも決めの所はきちんと決めに行ける噺家にならねば、と心に誓ったのでした。(でも決めるって実力が必要で…トホホ)

 

お岩様を演じる玉三郎さんについては…

アタシの愛読書のひとつ、関容子先生の『中村勘三郎楽屋ばなし』(文春文庫)の中にこんな記載が。

17世勘三郎から、お岩様の役を教わっている件があり、

伊藤家からもらった薬(実は顔の崩れる毒薬)を飲む前に、「丁寧に礼を言いなさい、そうすれば騙されたと知った時の悔しさが増すから」という教えがあったことが記されていました。

さすが玉三郎さん。ここは丁寧に礼を述べていらっしゃいました。そんな細やかな部分もしっかりと芸が継承されている事が、ファンとしては嬉しく、アタシも教わった事はしっかり守っていかねばと、またまた心に誓ったのでした。

今月の『四谷怪談』は仁左・玉の二人の美しさと芝居のコクを堪能出来る芝居だったように思います。

芝居のコクまで出せる役者さんは数少ないので、そのような方の芝居を観れるのはとても有難いです。

ちなみに『四谷怪談』の上演前には皆で四谷のお岩稲荷にお参りに行くのが通例だそうですが、伊右衛門を演じる役者は行かないのだそう。
考えてみたら当たり前ですね。祟る相手な訳ですから。

でも毒薬渡したりした伊藤家の面々も行かない方がいいのでは…。

 

(注)
7代目団十郎(だったかな?違ったらゴメンナサイ!)が初演で伊右衛門を演じる時に、粋な浪人が傘張りをしているのを見て、それを取り入れたという、『中村仲蔵』みたいなエピソードがあったそうな。
ですからアタシが憧れるのも無理はないのです。

(今回の構成)
第二幕・伊右衛門の浪宅の場面からスタート。
最初から伊右衛門が出て、すぐに小仏小平の指をボキボキに折る場面になるので、ダレ場なし。

そこからお岩様の霊と間違えて、新妻のお梅を、小仏小平の霊と間違え伊藤喜兵衛を殺し、火の玉が出るまでで休憩。

休憩後は隠亡堀で直助権兵衛と出会って戸板返し、だんまりまで。