鈴本演芸場「琴調の夏」。
毎年恒例、講談の宝井琴調先生がトリの興行です。
今夏は、一門でもないのに10日間を一本で顔付けして頂きました。
そしてこの芝居は少し変った芝居でもあります。
琴調先生は、落語協会の所属ですが、講談協会の会長もされています。通常、鈴本に出演できるのは落語協会の会員だけですが、この芝居では講談協会の方も出演するんです。
二ツ目の出番に1人。
仲入り後に、講談の若手真打が1人。
日替わりで2人ずつの出演。
琴調先生が「若手の経験になるから」とお願いをされたのだと思います。
アタシも毎日違う講釈師の後に上がるので、初日はちょっとドキドキしながら鈴本へ向かいました。
すると先生、17:25上りのアタシより楽屋入りが早いのです。
先生は19:45に間に合えば良いのに…。
「お客様はいらして下さっているかしら」と、心配で早くお入りになる方は時々いらっしゃいます。
が、それにしても早すぎでして!
毎年のトリ、慣れていらっしゃる筈なのに…。
疑問に思っていると先生が
「若手が普段出ない所に出るから戸惑わないようにね」
そうなんです。
先生は若手の為に毎日早くにいらしていたのです!!
アタシの興奮は伝わってますでしょうか?
1日2日ならともかくほぼ毎日です。
そうそう出来ることではありませんし、
聞いたこともありません。
また先生は講釈の二ツ目さんが時間をこぼしてしまうと、その度に「ごめんね」。
アタシが時間を戻して高座を下りると「ありがとう」とお気遣い下さるんです…。(注)
アタシは感激しております。
こちらは、同じく落語協会の琴柳先生に大変にお世話になりましたので、そのご恩返しの万分の1でも出来れば。
そんなつもりで短めにやっていただけでしたのに…。
逆に美しいモノを見せて頂いた日々でした。
琴調先生、ありがとうございました。
(注)
中日くらいに気がついたのですが、講釈の二ツ目さんが上がる時点で既に2.3分のびていた様です。
毎日人は違えど、必ず2.3分こぼすから変だなぁ、とは思っていたんですが…
みんな琴調先生から「持ち時間は15分」と言われて、きちんと15分作ってきたんですね。
琴柳先生が落語協会に入会された頃に
「講談って15分でやるのは大変ですよね」
と伺いましたら
「大変だよ〜。あんまり短いと粗筋になっちゃうからさ。本当はもう5分くらい欲しいけど、出来ないと思われるのはシャクだから」
と仰っていました。
そんな大変な15分をみんなきちんと作ってきて、素晴らしいですよね。
アタシも頑張ろう。
(2024.7.31 8:46 HPに投稿)