三三兄さんからの『三味線栗毛』。~落語勉強会「噺の種」~

「おお!これが本来の型の『三味線栗毛』!」

アタシは感激し、いつか三三兄さんから習おうと思っていました。

『三味線栗毛』との出会いは入門前。

北村薫先生の『空飛ぶ馬』という短編集でした。

落語家、春桜亭円紫を探偵としたミステリ小説「円紫さんとわたし」シリーズ。その中で十八番として出てくる噺です。

大名の次男坊・角三郎と按摩の錦木との、身分を超えた友情と思わぬ立身出世を描いた、ハッピーエンドの人情噺。

「いい噺だなぁ」

いつか実演で聞くのを楽しみにしていましたが、入門前に聞くこと(客席から高座を観る)は叶いませんでした。

それもそのはず、この『三味線栗毛』の演者は少なく、持ちネタとされているのは故・喜多八師匠と喬太郎師匠、菊之丞師匠に三三兄さんくらい。

そして、この噺には二種類のラストがあります。
ハッピーエンド型と、錦木が亡くなる型。

喬太郎師匠は演題を『錦木検校』とし、最後、錦木が亡くなる型に変えています。
また、喜多八師匠もタイトルはそのままですが、やはり亡くなる型。

どうもお二人に稽古をつけた先代の文蔵師匠が「こういう形でやったらどうかな」と仰ったのを、各々が工夫され、そのような型になったようなのです。

アタシが初めて聞いたのは三三兄さんで、兄さんは喜多八師匠に習っているので、当初、錦木が亡くなる型でした。

正直、せっかくのハッピーエンドの噺を、ドラマ性を強くするために登場人物を死なせてしまうのはなぁ、と思っていました。

ところが、三三兄さんが「円紫さんとわたし」シリーズを朗読劇風に演じる「柳家三三で北村薫」という企画の中で、作中通り(亡くならない型)に演じられたのです。

そういう経緯があり教えて頂いた『三味線栗毛』。

次の勉強会「噺の種」にて高座に掛けます。

 

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<噺の種>
この「噺の種」は10年、20年後を見据えたメインの勉強会。寄席や落語会で掛けるネタを仕込む大事な研鑽の場所。
特に初演はお蔵入りする可能性も。お聞き逃しのなきよう…。