[噺のネタ]4『阿武松』(芝居と相撲の噺は…)

 

「芝居の噺と相撲の噺は好きで好きでしょうがない奴しかやっちゃあダメなんだ」

とある噺家が高座で相撲のネタを掛けた時に、師匠がアタシに言った言葉です。

その後で「まぁ、お前は芝居の噺はやっていい」

そう言われたので、その後色んな芝居のネタを覚えました。

が、相撲についてはなかなか許可が出ず。。。

実はアタシにはどうしても掛けたい相撲ネタがありまして。

 

それが『阿武松』。

 

六代目の横綱・阿武松緑之助の若い頃の物語で、三遊亭円生師匠の十八番。

元々が講釈の為、地が多いのが特徴です。

ウケなくてもトリネタとして十分成立する噺なので、客席が重たい日なんかに掛ける方が多いんじゃないかしら。

円生師匠の台詞そのまんまの方が圧倒的に多いので、アタシのように地噺として笑いを多めに入れる型は特殊だそうで。。。

 

ん?

 

そうなんです。

許可の無いまま、実は他の師匠に教えて頂いて、こっそり掛けてました。

ところが悪いことは出来ない物で、

ある独演会で、師匠が開演前に『阿武松』をさらっていた所、言い立てが出て来なかったんです。

思わず横から「師匠、そこはこうです」

と口を挟んでしまったところ…

「お前…やってるだろ…」

(しまった!)と思いましたが、時すでに遅し。

怒られるかな、と思ったら「まぁ、いいか」と許しを得ることが出来ました。

それからは堂々と高座に掛けています。

 

一度相撲の道を閉ざされた男が、周りの人の力で横綱に出世する。

筋だけでなく、登場人物の思いを描くことによる噺の良さ。

地噺の楽しさだけでなく、こういう事も大事にしていきたいです。